PCコンポーネント
むしり取った衣笠、あるいは昔取った杵柄。

動作試験
ここらへんの手順は通常のDIY PCと何ら変わらない。自作ウラシマとしては、新世代パーツの性能を存分に感じていきたい。
裸のマザーにCPUとメモリとストレージを搭載、VGAが届かないので内蔵GPUを使用し、ミニキーボードを接続して動作試験。
水冷前なので空冷CPUクーラーを使用。リテールクーラーが付属していれば使い捨てられたのだが、i7-6700Kには付属しない。仕方が無いので、別途購入したSCYTH 虎徹で動作試験と相成った。わずかな試験だけでお蔵入りさせるのは勿体なくはあるのだが、仕方ない。
最近のCPUは、VIDを調べることである程度OC耐性などの素性を知る事ができるという。期待しながら表示させてみると……
アカン(´Д`;)
1.28Vを切れば当たりの確率高しというが、表示されたVIDは、なんと1.334V。当たりなら既にOCで印可されるような電圧である。つまり、大ハズレの予感。
気休めとしては、SkylakeでのVIDはリングバスによって要求電圧が引き上げられているので、コア自体が外れと決まった訳ではない、のだが。
定格動作は問題なくクリアしたので、動作試験としてはこれで良いのだが。
Samsung 950 PRO Seriesヒートシンク効果検証
高速、爆熱、サーマルスロットリングの三題噺の題材であるところの950 PROだが、ヒートシンクの装備にどれくらい効果があるか検証してみた。
方法は単純明快。2つ用意した950 PROの片方にヒートシンクを装着、RAID0を組んで同時に負荷をかけて温度変化を見るというもの。
結果ははっきりと現れた。CrystalDiskMarkで負荷をかけてみると、ヒートシンク非装備側は瞬間的に70℃を突破。対してヒートシンク装備側の温度は10℃以上低かった。
温度変化の推移を記録してグラフ化するような凝った真似はできていないが、ヒートシンク装備側は温度変化が穏やかになっている。
ただし、ベンチマークのように長時間連続して高負荷が続くと、ヒートシンクがあっても熱的に飽和して60℃台に突入してしまう。装着したヒートシンクの大きさから言っても仕方ない部分ではある。
なお、ファンコントローラにちょうど接続中のケースファンがあったので、これを使ってヒートシンクに直接風を当ててやると覿面に温度が下がった。何らかの形で風を送れるようにしておくと安心が増すかもしれない。
CPU殻割り+LIQUID Pro処理
Skylakeを使いきるなら、殻割りは避けて通れない道である。らしい。
知らないひとのために説明すると、「殻割り」というのはCPUに接着されているヒートスプレッダを剥がすこと。目的は、CPUダイに塗られているTIM(Thermal Interface Material)を熱伝導率の高い素材に交換すること。
端的に言えば、このTIMが熱移送のボトルネックになるため、これを改善せずにCPUの冷却を強化しても効果が減じられてしまうのである。
かつては刃物や万力などでワイルドに割られていたが、現在は「Rockit 88」というツールがある。3月にKickStarterでクラウドファウンディングに成功したもので、殻割りツールとヒートスプレッダを付け戻す際の治具を兼ねている。
これによって、殻割りは安全確実に行える作業になった。早速やってみよう。
殻割り
Rockit 88による殻割りはとても簡単だ。
Rockit 88にCPUをセットしてネジ留めし、ボルトをレンチで締め上げるだけ。早割りの記録に挑戦でもしていない限りは、まず失敗することはないだろう。
あとはRockit 88を分解してCPUを取り出すだけ。ヒートスプレッダとCPUの接着は破られているので、ヒートスプレッダを取り外す。
ダイに付着したTIMはボソボソで、あまり熱伝導の役には立ちそうにない。これをより熱伝導率の高いものに塗り替える。
まずはCPUとヒートスプレッダにこびりついたTIMとシール材の滓を綺麗に取り除いておこう。
LIQUID Pro処理
LIQUID Pro(独:Cool Laboratory社製)、通称リキプロ。
特徴は、高性能とされるサーマルグリスでせいぜい10.0W/(m・K)前後なのを嘲笑うような、公称82.0W/(m・K)という熱伝導率。なるほど、CPUダイのTIMにはうってつけである。
成分はガリウム、インジウム、スズの合金からなる液体金属らしい。いかにもドイツ発らしい変態マテリアル。
導電性かつアルミを侵食するというアブないシロモノでもあるため、塗布の際には養生するなど注意が必要。はみ出て垂れでもしたら目も当てられないので、付け過ぎ注意(芥子粒大とか、米粒半分位とか、そのレベルで足りる)。
コツは塗布面をアルコールなどで確実に脱脂することと、付属のスポンジヤスリで少しだけ表面を荒らすこと。あまり塗布面が平滑すぎると表面張力で弾かれる。
CPU組み立て
処理が終わったらCPUを組み立て直す。
シール材でヒートスプレッダをCPUに接着し直す。Rockit 88を治具として使うことで、ヒートスプレッダを確実に元の位置に戻すことができる。よく考えられたツールである。
剥がした時に注意深く観察していれは気付くが、接着面には一部だけ隙間がある。空気の熱膨張を考慮しているのだろう。接着する際にも同様の配慮をすること。
Rockit 88にCPUを固定したら、シール材が硬化するまで数時間待ち、ヒートスプレッダの周囲にはみ出た分を取り除けば完成。
では、効果のほどを検証してみよう。
CPU殻割り+LIQUID Pro処理の効果
効果の計測には、CPUの負荷テスト「OCCT」を用いる。
軽くOCし、4.5GHzで30分実行した結果が左の通り(上:処理前、下:処理後)。平均、ピークとも20℃近い低下を示した。
オーバークロックのえらいひとがイベントで「ぶっちぎりで効く」と言っていたが、その言葉に違わぬ威力である。
安全な手法が確立され、しかもこれだけの効果が得られるなら、確かに割らない理由がない。
なお、欲をかいてヒートスプレッダとCPUクーラー/ウォーターブロックの間にまでリキプロを塗るのはオススメしない。熱移送のボトルネックはあくまでCPUダイとヒートスプレッダの間なのであって、そこから先は少し気の利いたサーマルグリスで充分事足りるだろう。むしろ、基板に垂れて壊れかねないリスクを背負う事になる。
いくら熱伝導率が高いと言っても、決して塗れば塗る程冷える魔法の薬では、ない。