Sep.11, 2005

毎日使う鞄にこだわってみる

[My Favorite]

鞄というものには、単なる収納用具と一言では括れない奥深さがあります。

人が持ち運ぶ、身に着けるという意味においては服飾の一部である、という多面性もその理由でしょう。しかし、最もその奥深さを感じる瞬間があるとすれば、それは数多ある品々の中から選び抜いて持ち歩く、その選択に込められた持ち主の趣向への興味を感じ取った時なのかもしれません。

そんなわけで、今日は自分の鞄へのちょっとしたこだわりをご紹介しましょう(ただし、私は鞄マニアではないので、悪しからず)。

私がこれまで永年に渡って使い続けてきたのは、、Kensingtonのサドルバッグでした。ナイロン製の3wayバッグで、ノートPCを含む大きな収納力にフラップ一枚だけでアクセスできる使い易さ、そして8000円そこらという安さがポイントです。

同じ物を買い替えて使い続けてきましたが、買い換えた方は造りが安っぽくなったようで、あちこち減ったり擦り切れたりと先代より確実に寿命が短くなっていました。また、生活スタイルの変化で(歳を喰ったとも云うorz)3wayの必要性が薄れた上、「縦長」という形自体にも段々不便を感じるようになってきました。

そこで一念発起、鞄を買い替えることにしました。

私にとって、第一に鞄に求めるのは実用性です。真に機能的・実用的なものには、それだけで機能美とも言うべき味わいが備わるものであって、装飾自体が目的の装飾やデザインは不要だと考えています。また、「実用性」という概念にはコストパフォーマンスも含まれます。

そうした嗜好に加えて、次のように主な要求事項が挙がります。

  • 主用しているB5ノートPC(世代交代することはあるがB5なのは同じ)と周辺機器を安全に収納できる
  • PDAや音楽プレイヤーといったデジタル小物が収納できる
  • A4までの書類・書籍が収納できる
  • 手提げ、肩掛けが可能

これ以外のプラスアルファ要素は個別に判断していくことになります。

まず、ファッション性に比重が偏っている上に高価過ぎる、所謂「高級ブランド品」は真っ先に除外されることになるでしょう(メディアの煽りを感じる「流行」「ブランド」に対する盲目的な信仰への嫌悪もあるかも。あるいはただの天邪鬼か)。とにかく実物を手に取って、素材や細部の造りを実際に確かめていきたいところです。

その結果、今回採用したのがこの鞄です。

シルバーレイククラブ ビジネスバッグ(234304)
サイズは内法で40cm×30cm×10cm+3cm(外部ポケット)

シルバーレイククラブは、「フィッシングを切り口としたOUTDOORの世界。OUTDOOR用の耐久性と機能性、そしてフィッシングをイメージした防水性。これ等の特性を1つ1つ吟味しタウン用にフィードバックした鞄作り」というコンセプトで鞄を作っているブランドです。私自身はフィッシングに縁はありませんが、実際に触れてみると、とにかく頑丈に出来ているのが良く解ります。

裏側。ストーンウォッシュ加工のため、
いかにも新品然とした感じはしない。
内部。防水・断熱仕様のシルバー布。
内部右の仕切は500mlPETや折畳み傘用。
サイドポケットとベルト基部。
ベルトも厚手で頑丈そのもの。
オーダーして追加してもらった底鋲

素材に採用されているのはDH-9000、通称9号と呼ばれる帆布ですが、よく見るベージュのキャンバス地とは異なり、黒染めしてから洗い晒してあります(使用中の色落ちを避けるため、前もって素材の段階で洗い晒してしまうらしい)。元々の用途が幌用なので防水性があり、しかもその防水性は使い込むほど却って高まる、とアピールされています。

これとは別に内部に使われているのが、アルミ樹脂コートのシルバー布。フィッシングの世界をルーツに持つとはいえ、クーラーバッグでもないのにここまでするのはオーバースペックにすら思えますが(笑)。おかげで、こと防水に関しては水没でもしない限りは大丈夫そうですし、断熱仕様というのは炎天下に黒い鞄というシーンを考えると安心感があります。

ポケットの塊か入れ子細工かというような高機能ナイロンのバッグに比べると内部のレイアウトはシンプルですが、それは後から補う手もあるし、そのためには余計なものは無い方が却って好都合です。その代わりと言っては何ですが、造りはひたすら頑丈。表、裏、底面にはウレタンらしいパッドが仕込まれ、幅広・厚手の布製ショルダーベルトも、取っ手や留め具の革部分も頑健に造られています。頑丈といっても造りが大雑把なわけではなく、縫い合わせ部分などの処理が丁寧なのも見逃せないポイントでしょう。

そして、決め手になったのは対応の細やかさ。この手の鞄は場合によっては床に置くケースがあるのですが、その際にものを言うのが底鋲の存在です。それがないのが画竜点睛を欠きますね、と(失礼にも)言ってみたところ、カバン店の店長さんが製造元に問い合わせて下さり、「後付けで良ければ対応できる」という回答を頂きました。そこまで言ってくれるならもうお願いするしかありません(笑)

オーダーから二週間ほどで手に入れることができ、現在慣熟中です。Kensingtonのバッグで染み付いた「縦型」という感覚とのギャップがありますが、これはすぐ慣れるでしょう。

PC周りの収納力を補うため、東急ハンズでカバンの中身PCを購入。何でもカバンに造り付けるよりは、こういうアイテムで関連するものをユニット化してしまうのが合理的でしょう。ただ、各種ポケットの活用法は、取り出す時の使い勝手なども考えながらじっくり詰めていく必要がありそうです。

全くの余談ながら、これを買いに出た日曜日の昼下がり、都心一帯で突然激しい雷雨に遭遇しました。期せずしてその防水性が試されることになったわけですが、全く問題ありませんでした。(カバーされているとは言っても)上向きの開口部を持つ構造である以上、これを過信して何時間も雨に打たれたいとは思いませんが、タウンユースでは申し分のない性能だと思います。

ポケットに入れる物の配置に悩んでいることを除くと、今のところ難点というほどの難点は感じていません。天然素材を多用しつつ頑丈に作ってある都合上、それなりの重さになっているのは事実ですが、大型の把手と幅広のベルトはそうした重さを負担にすることなく、安定した使い心地を提供してくれます。何より、素材の手触りの暖かさは、一見綺麗に見えても身に着けると滑る・蒸れるというナイロンや合革とは比べ物になりません。

質実剛健、実用性を前面に押し出しながら、素材と機能美だけで十分な味わいを感じさせてくれるこのブランド、何より製作者自身のこだわりがその魅力なのかもしれません。そのこだわりが、「ここさえ満たされれば」という一ユーザーのオーダーまで拾い上げてくれる対応にも通じているのでしょう。

決して高級でもなければ有名でもないブランドですが、実用的、かつ絶対的に「良いもの」が欲しいという方には、十分にお勧めできる品々だと思います。

シルバーレイククラブの商品自体は、最近では東急ハンズや一部百貨店でも扱っているようです。ただ、今回私がやったような、製作者に対する問い合わせやカスタムオーダーは百貨店では難しいかもしれません。

そうした相談をお持ちの方は、今回お世話になった鞄の専門店ヒロセさんに御相談してみては如何でしょうか。

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