時間の合わせ方
現代の時計とはちょっと違う、アンティーク時計の時間合わせ方法について。
現代の時計は大抵、竜頭を引くと秒針が止まります。だから正時に合わせておいて、時間が来たら竜頭を押し込むだけで時刻合わせが出来ます。この仕組みをハック機構と呼んだりしますが、アンティーク時計にはほとんど備わっていません。つまり、秒単位の時刻合わせにはちょっとしたコツが必要になります。
ポイントは、時・分・秒を一度に合わせるのではなく、
1.秒針を合わせる
2.時・分針を合わせる
…と、二段階に分けて合わせることです。
では、秒を合わせてみましょう。必要な手順は、次の二つです。
1.時計を止める
2.任意のタイミングで時計を動かす
ハック機構を持たないアンティーク時計でこれを行うコツは、
まず、時計が自然に止まるまで時計を安置しておくことです。「放置」ではなく「安置」であり、余計な衝撃などを加えないように注意が必要です。
この状態では、時計は一応止まっていますが、ゼンマイはまだ完全には解けていません。わずかな力で回ろうとしている歯車が脱進機に止められているのですが、テンプが止まっているためにこれを解放してやることが出来ない状態です。
この状態で、時計の秒針に注目します。60秒どころか、秒と秒の間に止まっている事さえあるかも知れませんが、気にしないで下さい。
さて、静かに、極力水平を保って懐中時計を持ち、基準となる時計の秒針を見ます。止まったままの懐中時計の秒針と一致するタイミングを見計らい、文字盤に対して水平の方向に、懐中時計を捻るように数回往復回転させてやります。
きちんと整備された時計であれば、この程度の揺れでもテンプが振れるため、僅かに残ったゼンマイの力で秒針が動き出します。動き出した秒針の表示が基準となる時計に一致していれば、そのままゼンマイを一杯に巻き上げて「秒」の時間合わせが完了します。
タイミングを誤った場合は、また秒針が止まるまで時計を安置して同じことを繰り返します。あまり繰り返すと完全にゼンマイが解けてしまいますが、その場合は竜頭の半回転~一回転単位で、少しだけゼンマイを巻いてやります(テンプが動かない限り、ゼンマイを巻いても時計は動きません)。
秒が一致したら、時分針を合わせます。レバーセットの場合はレバーを、ペンダントセットの場合は竜頭を引いて時刻合わせが可能な状態とし、秒針が60秒を指した瞬間に分針がインデックスの中心を指すように針の位置を合わせます(多少慣れを要するかもしれません)。
分針と秒針が合っていることを確認したら、ペンダントあるいはレバーを戻して時刻合わせ完了です。
このように、秒針まで含めた時間合わせは少々面倒なので、むしろ「一分以内の誤差は無視し、誤差が一分に達したら分針だけ合わせる」というやり方がオススメです。アメリカ製の鉄道グレードの時計なら、これでも月に一度程度合わせる必要があるかどうかです。
※時刻合わせにはネイルセット(ダボ押し)という方式もありますが、現物を持っていないので省略しました。基本的な部分に違いはないので、適当に読み替えてください。