Nov.12, 2007

幻の時計再び!

[Mechanical Watch]

これは結構な大ニュース。

アンティーク時計マニアならずとも少なからぬ人がその名を知る時計、「マリー・アントワネット」ことブレゲ No.160が発見されたと11/11付けのイスラエル紙が伝えているそうです。併せて公開されている画像を手元の本(George Daniels & Ohannes Markarian, WATCHES & CLOCKS in the Sir David Salomons Collection)の写真と見比べる限り、信憑性はかなり高いように思えます。

大雑把に説明すると、No.160とは、時計史にその名を記す巨人アブラアン・ルイ・ブレゲがマリー・アントワネットの為に製作したと(マリー・アントワネットの衛兵隊長からオーダーされたとも)される、ブレゲの中で最も複雑な時計(最高傑作なのかどうかは研究者に聞かないと判らないけど)です。

クロノグラフやミニッツリピーター、パーペチュアルカレンダーといった複雑機構を持つ時計をコンプリケーション、それらの機能を複合して兼ね備える機械をさらにグランド・コンプリケーションと呼んだりしますが、No.160はまさにその極致。前述の複雑機構(永久カレンダーは閏年対応)は言うに及ばず、等時性("equation"ってこの訳で良かったんだっけか?)表示やパワーリザーブに自動巻き、果てはバイメタル式の温度計まで備えているそうで、写真を見ても俄かには表示の見方すら判らないような代物です。機能だけでなく、仕様としてもパラシュートサスペンション(耐震機構)やフリースプラング(緩急針を持たない)、ダブルバレル(香箱が二つ)など当時の最先端を突っ走っています。1783年製造とは言いながらも、実際に完成したのは1820年代の後になってのことというあたり、その複雑さの一端が伺えます。

素材は機構上鉄でなければならない部分を除いて基本的に金、軸受けにはサファイア(人造ルビーの製法が確立されるのはもっと後になってからなのでこの時代では貴重)、自動巻き用の錘(腕時計用の回転錘とは違い、往復する振り子のようなもの)にはプラチナ、文字盤は水晶で今でいうスケルトン仕様と、作りにも贅が凝らされています。

本になっているように、Sir David Salomonsのコレクションにあったものがエルサレムの博物館(L.A. Mayer Memorial Institute for Islamic Art)に移り、その後1983年4月15日に盗まれて以来行方知れずになっていたものです。ギャラリーフェイクでもネタになってたけど、あれは……まぁw

……とまぁ、そんな時計が約25年ぶりに発見されたというニュースなわけです。

どういう経緯で見つかったのか記事だけではよく判りませんが、併せて見つかったものの中には金や宝石が外されてしまったものもあり、未だに捕まっていない犯人は少なくとも時計コレクターではなさそうだ、という話ではありますが。何はなくとも完全な形(と思う)で発見されたのは素晴らしいことです。

博物館では早期に展示することを計画しているそうなので、メディアでお目にかかれる日も遠くないかもしれません。

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