May.11, 2006

その申請、一件四萬円也

[Diary]

こんな記事が出ていたり。

電脳ゼネコンの下請けという立場上、この手の「電子○○」に関わる機会はそれなりにあるけど、その経験に基づいて言うなら、何を今更といったところ。

利用されない原因が何かというと、単に全く便利でも何でもないというだけの話。

住基カードがどーとかICカードリーダがこーとかいうしち面倒くさい縛りもそうだけど、「JRE1.3.1でのみ動作」など、セキュリティのセの字でも齧っていたら噴飯ものの環境設定を強要されたりするのでは、そもそも使おうという気が起こらないのは当たり前(現に、その筋では有名な産総研の研究者には酷評されている)。で、仮にその技術的障壁を乗り越えたら世界はバラ色なのかといったら、んなこたーない。

システムにアクセスしたらしたで、単に書類の面倒を電子の世界に持ち込んだだけの煩雑極まりない入力画面群との格闘が待っている。しかも大抵Javaで構築されているので、無駄に大仕掛けな割に動作が異様に遅いことが多い。メリットらしいメリットは、窓口の営業時間に縛られないことくらいじゃなかろうか。

この茶番の根本的な原因はSIerのタコさ加減(FNGや外注によるやっつけ仕事)だけではなく、発注側、すなわちボンクラ役人共の頭の悪さにもあると思う。

電子化、オンライン化は合理化の手段であって目的ではない。つまり、電子化なりオンライン化なりをするのならば、それをきっかけに該当業務全体を見直さなければ意味がないのだ。「まず様式ありき」「まず帳票ありき」という発注者にはそこのところの認識が根本的に欠落しているとしか思えない。

その様式を構成する情報はそもそも何であり、なぜ必要なのかを分析し、オンラインでの処理も視野に入れて合理化し、それを非電子業務にもフィードバックすることで業務全体の効率を上げる。それが業務の利用者たる国民の利益に繋がるからこそ、税金使ってまで発注する意義があると思うのだが、どうだろう。

そこを無視して縦割りの組織を動き回る紙の論理をシステムに押し付けるから、何がしたいのかさっぱり解らないタコなシステムが出来上がるのであり、そんなものを好き好んで使いたいなどという変態趣味な人間が少ないのは当たり前の話なのだ。で、これが最も腹立たしいことなのだが、この莫迦げた事態についておそらく誰一人責任を取ることはない

無駄を追及する側にいる人には、是非ともこういう視点を持っておいて頂きたい。その上で、「何故それが必要なのか?」を徹底的に突き詰めて頂きたい。理詰めで行かなければ逃げられるとはいえ、理詰め=専門知識ではないので、煙に巻かれないよう。

私に言わせれば、明快にその存在理由を説明できないシステムは、間違いなく本来不要だが、政治的な理由によりやらなきゃイカンことになっているシロモノだ。

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