Dec.28, 2006

敢えてオンラインでTRPGをする意味

[Diary]

最近、オンラインでのTRPGキャンペーンが花盛り。

この話自体は先月から色々しているが、周囲の反応に「よくチャットなんかでTRPGができるなー」というものがあった。オンライン(主にチャット)上でTRPGをプレイするオンライン・セッション。テーブルトーク・セッションと比べるとどうなんだろう、と考えてみる。

確かに、媒体が違えば、その性格もまた随分と変わってくるのは確か。それをどう捉えるかによって、オンライン・セッションに対する評価は大きく変わってくるだろう。端的に言えば、オンライン・セッションを「テーブルトークの代替物として考えるか否か」がその評価の分かれ目となるんではないだろうか。

「テーブルトークの代替物」として考える限り、オンライン・セッションはそのデメリットばかりが強調される不完全な代物という評価を免れ得ない。前述の「よくチャットなんかで~」というのはその典型例だろう。

何故不完全と言われるかというと、テーブルトークの最大の強みである、実際に顔を合わせ、必要なら小道具も使うといった「非言語コミュニケーションを交えた濃密な情報交換」を他の媒体で代替するのは至難だからだ。たとえテキストメッセージをボイスチャットやテレビ会議の類に置き換えたところで、問題の解決には程遠い。

ただし、テーブルトークはその強みの代償として「全員が一堂に会していなければ開催できない」という厳しい時空間的制約を伴っている。その最大の泣き所を唯一カバーできるがゆえに、オンライン・セッションはその不完全さにもかかわらず渋々ながら受け入れられる、とも言える。

しかし、本当にそうだろうか?

私は、オンライン・セッションには「代替品」ではない独特の長所があると考えているのだが、それを云々する前に、もう一歩戻って考えてみる。そもそも、何のためにTRPGをするのか?ということだ。

TRPGではマスターはシナリオを(時にはシステムも)用意し、プレイヤーは己のキャラクタとその背後に構築したロジック(人格、といってもいい)をもって当たる。そして、それらが掛け合わされた結果として生まれる物語を共有する。つまりはこの「物語の構築」("Tales Weaving")こそがTRPGの本質ではないか?とここでは仮定してみたい。

つまり、「物語の構築」という本質に対する切り口の違うアプローチ。テーブルトークとオンラインの違いを私はこう認識している。両者は違うものではあるが、対立するものではないし、相容れないものでないと思う。まして代替品などでもない、と。

そこで、オンライン・セッションにどういう長所があるのか、という話に戻る。

まず、その記録性の高さは真っ先に挙げて良いだろう。logさえ取ってあれば、最低限の労力でそのプレイの過程と結果を保存・活用できる。特に、それまでの経緯を継承しなが進めるキャンペーン型の展開には有用だろう。テーブルトークには真似出来ない、とまでは言わないが、テープ起こしから背景の解説まで含めた「リプレイ」の製作に要する労力は生半可なものではないのも事実。

また、プレイヤーとキャラクタの分離が容易なことも、演技という面ではプラスに働くと私は考えている。テーブルトークの場合、プレイヤーのイメージに引きずられてキャラクタのイメージを保つのは難しい。声色や表情など、その情報量の多さが却って裏目に出る局面だ。

つまり、情報の密度には劣るかもしれないが、その分余分なノイズを減らし、純粋に物語を楽しむことができる可能性がある。といったあたりがオンライン・セッションの長所と言って良いのではないだろうか?

…というわけで、私は自分なりにこのオンライン・セッションという手法を好んでいるし、その可能性にも期待しているものがある。わりと積極的に今回の企画に協力しているのはそのためだ。

ただし、オンライン・セッションを人にオススメできるレベルに到達させるには、解決しなければならない課題がいくつかあるのも事実。これまでのプレイで出てきた問題的を潰しながら、システム(フレームワーク)として練って行けたらなぁ、と思う。

…などと当たり障りなく比較してみたが、実は、私個人はテーブルトークが大の苦手なのだった。

私は含羞の人なので、人前で「演技する」ということ自体に非常に抵抗がある。キャラクタが女性だったりした日には目も当てられない(付き合いの長い畏友諸氏は、私が今まで話の中で自分のキャラクタをまず名前では呼ばないということに気付くかも)。さらに正直に言ってしまうと、他人が演技にのめり込むことを見るのも「イタい」と感じてしまうくらいなのだ。とてもじゃないがテーブルトーク向きではない。それは重々自覚している。

というわけで、情報を主にテキストで扱うオンライン・セッションは、私にとってはキャラクタのイメージ、演技、感情移入など、様々な点で有難いものなのだった。形になった物語を反芻する楽しみもあるし、そうするうちに話や設定を膨らませていくのも楽しい。

それに、昔佐藤大輔も書いていたが、テーブルトークをプレイして楽しいプレイヤーとならば、実はTRPGするよりも一緒に酒を飲んで語り合った方が楽しいというミもフタもない話もある。折角会ったのならばそうやって友誼を深めつつ、直接会えない日々の折にこそ、オンラインの世界で互いの知恵と感性の掛け合いでもって物語を作るセッションを楽しむ。それでいいじゃないか、とか思ったり。以上、個人的感想。

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