Jan.11, 2007

アメリカ懐中時計の泣き所?

[American PocketWatch]
あまり適当な素材ではないけれど、一般的なアメリカ時計(Waltham Cresent St.)のアンクル。白いのは実はカビ;

去年から触れてはいたけれど、記事にしていなかったので小ネタ代わりに。

仕様の豪華さや仕上げの良さが魅力のアメリカ懐中時計。しかし、スイス等の高級機と比べた時に唯一見劣りすると言われるのがアンクルという部品です。

アメリカ製の懐中時計では、ことアンクルに限っては23石の高級機でも面取りや研磨といった加工はなされていないことが多く、そうした意味では泣き所と呼ばれるのも止むを得ないところかもしれません(もっとも、そうした加工が目に見える性能の差に結びつくわけではないのですが)。

シリーズ0のガンギ車。衝撃面が研磨されている。しかし、これより凄い仕上げもあったりする。

シリーズ0のアンクル。その新奇なスタイルに目が行きがちなシリーズ0だが、こういう部分の仕上げが最高級であるということは意外と知られていない?
SangamoSP_Anchor.jpg
ちょっと写真が小さいがサンガモ・スペシャルのアンクル。こちらもきっちり仕上げられている。

しかし、何事にも例外というものはあるもので、アメリカ製の懐中時計でもアンクルまできっちりと仕上げられたものが存在する、というのは先日手に入れた一品が証明しています。

では、こうした仕上げは本当に滅多にお目にかかれないような稀少品なのか?験しに手持ちの時計を漁ってみました。

結論というにはサンプルが少なすぎますが、私程度で手に入れられたものだけを見ても、結構良いものがありました。

その代表例がキーストーン・ハワードのシリーズ0。ガンギ車の衝撃面研磨に始まり、アンクルの面取りと研磨仕上げ、側面に曲面を持った爪石と、見事な一品です。取材させて貰った吉祥寺のお店によれば、シリーズ0に関してはアンクルの仕様は全てこうなっているとのこと。キーストーン・ハワードはアメリカ懐中時計としては後期から末期にかけてのメーカーですが、単に新機軸を取り入れるだけでなく、見えないところにこれだけの仕上げを施していたとは、あらためて見直すことしきりです。

あと、顕微鏡写真まで用意できなかったのでちと解りにくいかもしれませんが、イリノイのサンガモ・スペシャルのアンクルもきちんと面取りされて仕上げられており、爪石の側面も丸みを帯びているように見えます。ガンギ車には特別な処理はされていませんが。

他にも、アメリカ製の時計でアンクルの仕上げが見事な例を紹介している方もいらっしゃるので、こうした例は多数派ではないにしろ、決して少ないものではないのではないか、と思えてきました。

というわけで、もう「アメリカ懐中の泣き所はアンクルの仕上げ」なんて言わせないぞ!と気勢を上げたりなんかしてみます。

少しずつでもいいから、こういう見所のあるものを集めていけたらな、と思います。実弾ないしね。orz

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Comments

From :あしなが : 2007年01月14日 01:25

PsyonGさま、こんにちは。キーストンハワードのガンギや
アンクルは、いろいろなグレードで見たのですが、概ね良い仕
上げでした。このメーカーも、オールドほど人気があるわけ
ではなく、結構お買い得な感じがします(特別モデルは高価です
が)。イリノイあたりも、モデルによっては良い仕上げのモノ
が幾つかあるようで、そういったモデルを中心にコレクション
していくのは面白いですよね~・・意外と、巷の評価と関係な
い時計がクローズアップされてくることがあります。

ELGINですと、16Sや6Sのゴールドガンギ付のは、意外と良い
出来のようです・・

あと、中級レベルのスイスブランドでも、それほど良いできで
ないものが多いようです。それ以上にアメリカの並以下の製品
に仕上げを詰めてないモノが多すぎる(しかも超大量)のですが・・

From :PsyonG : 2007年01月16日 22:49


>> あしなが 様

こんにちは。いつもコメントありがとうございます。

貧乏人の僻みといえばそれまでですが(笑)、私にとって「お買い得感」というものはとても重要です。単にブランドがどうとかレアであるとかいうものよりは、見えない部分まで手抜きなく仕上げられていたりといった、絶対的に「良いもの」としての売りがあるものに惹かれますし、それが良心的な(?)価格で手に入るとなればなおのことです。スイスの高級ブランド(の高級品)なんかも、モノとしては確かに良いのですが、どうしても高価くつく……;

並級品はスイスもアメリカもさすがにそこまで手がかかってないのはおっしゃる通りですね。それでも量と仕上げを考え合わせると、往時のアメリカ時計って凄いなぁとも思いますが。

骨董はわりと「縁」みたいなところもあるので、「これは」と思ったものを、その売りをちゃんと解った上で集めていけたらなぁ、と思います。

こんなところで聞くのも何ですが、あしながさんが紹介されているG351のアンクルも素晴らしいものですね。差し支えなければ、こちらからリンクして紹介させて頂ければと思うのですが、如何でしょうか?

From :あしなが : 2007年01月18日 03:58

PsyonGさま
アメリカモノの魅力を書き出すと、確かに1つのHPが充実して
しまったり、ブログが長年続いてしまったりするぐらいあるの
だと思うのですよ・・

でも、普段いいなぁ・・と思うのは、なんともいえない"好きさ
加減"で、理屈でなく直感的なんですよね(笑)。

>>「これは」と思ったものを、その売りをちゃんと解った上
  で集める・・

私もなんとなくそんな感覚が大半を占めていて、それがELGIN
の場合だと、より強烈なのかもしれません。そして何故自分が
そんなに惹かれるのか、人に理由を説明しようとすると、ブロ
グでゴニョゴニョつぶやく客観的な?もっともらしい資料説明
だったりするんではないかなぁ・・と、いう感じです。

リンクの件、もちろん喜んで。G351以外にG156とG162のアン
クルも、細いシェイプをした良いデザインだと思います。
たしかG156をお持ちのお友達がいらしゃいましたね・・きっと
良いモノだと思います。

ちょっと間が空きますが、整備した時には写真をアップします・・

From :PsyonG : 2007年01月18日 23:07


>>あしなが 様

こんばんは。快諾いただき、ありがとうございます。

件の記事に限らず、資料を押さえて簡潔・的確な解説が加えられている点には恐れ入ります。とても勉強になります。

知人のG156は確かに逸品と呼んで差し支えないものだと思います。ひねくれてて好みのうるさい人ですが、眼は確かです(笑)。絶好調で稼動中なので、部品の撮影まで頼もうと思ったら結構先の話になってしまいそうですが。


> そして何故自分がそんなに惹かれるのか、人に理由を説明しようとすると、
> ブログでゴニョゴニョつぶやく客観的な?もっともらしい資料説明
> だったりするんではないかなぁ・・と、いう感じです。

同感ですね。好きなものが何故好きなのか。根拠のない感情論ではなく、高踏的・衒学的な抽象論でもなく、事実とそこにある実物をもとに少しずつ、丁寧に説明していけたらいいな、と私も思います。精進しないと。

From :白苺 : 2007年01月19日 18:01

キーストーンハワード仕上げ良いですよね。
最後期の石がちっちゃくなっちゃったりしている
モデルでも意外とスチールパーツの仕立ては良かったり。
アンクルの仕上げですが、0じゃなくても良いですよ。
私の持っている5,8,10(もちろん0も)全てアンクルが
綺麗に磨かれております。0,5,10(後エドワード)は
同じウォルサムブリッジの末裔のModel1907系なので
まだしも、薄型のシリーズ8の仕上げの良さは意外&
惚れ惚れです。

From :PsyonG : 2007年01月29日 00:45

おお、情報提供ありがとうございます。

マニアの視線は専らオールドハワードに向きがちな気もしますが、キーストーンハワードだって捨てたものではありませんね。

手頃な値段で手に入るなら、初めてアンティークに触れようというような方にもオススメできるかも。