Nov.05, 2007

ちょっとそこまで……の筈が

[Diary]

親不知摘出手術の抜糸(歯抜いた跡に歯茎縫うってのからして既に尋常ではないような気が)の後、凶三郎環境の手当て(DVI延長ケーブルとサラウンドスピーカを置くスタンドの物色)のためにホームセンターに立ち寄った後。

駐車場の出口から道に車を出そうと一時停止したところ。

「たすけてください」と黄色い前歯が半分欠けたじーさんが運転席のガラスに張り付いてきた。一瞬かなりびびる。バイオハザードか何かかと思ったぞ。

見ると、先行して道に向かって左折中とばかり思ったセダン(確か日産のプレセア)の格好が何かおかしい。運転席の視点からでは判らなかったが、降りてよくよく見てみると、歩道の縁石を左折しながらまたぐように突っ込んで完全に乗り上げてしまっていた。後輪が完全に浮き上がって手で回せたりする。一体何やってこうなったんだじーさん。しかも助手席ではいかにも入院患者みたいな感じの寝巻き姿のばーちゃんがブルブル震えていたりする。

種籾を奪うなどの老人いじめが許されるのは北斗の拳の中だけだし、さすがに見捨てるのは憚られるので、とにかく事故車の周囲をチェック。なんか今回の件とは無関係そうながらあちこちぶつけた跡があり、バンパーは歪みからか左側の端が飛び出してブラブラしてるし、そもそも左前の車幅灯のカバー割れてるし。若葉マークならぬ老人マーク(オレンジのアレだ)が付いた車って大概挙動が怪しくて嫌なもんだが(青信号の横断歩道で信号無視のジジイに轢かれかけたことがあって、以来オバハンと一、二を争うくらいに危険なシロモノと見なしている)、これもかなりのものといった雰囲気。乗り上げたのは主に後輪側のフレームで、左前のサスの底もちょっと噛んでるように見えるのは気になるが、とりあえず何か漏れている気配もないので、ハザード出して大人しくしているように指示してホームセンターの責任者に事情を説明しにいく。

どうも話が要領を得ない(誰がこの車を持ち出してぶつけてくるとか、どうでも良いことばかり何度も繰り返す)のでいささか疲れるが、左折時に右から来た車を避けようとハンドルを大きく切って前進(何でブレーキ踏まんのかというツッコミは同感)、歩道の縁石をまたぐように乗り上げたらしい。

何とかしてくれと云われても、機材も資材もないのでは如何ともしがたい。牽引フックで引いてみようにも、車輪が浮いてるってことは荷重の大半が縁石に乗り上げたジャッキアップみたいな状態なわけで、こんな風にスタックしたものを引きずり出すような負荷に耐えられるかどうか見当がつかない。そうこうするうちにたまたま警邏中のパトカーが通りがかって何事かと寄って来る。これ幸いと検分を任せてホームセンターに戻り、JAFのレッカーじゃなくて警察のレッカーに任せるかどうか相談(「ちょっとそこまで」のつもりで出てきていたのでPHSを持ってきていなかったのだった。この辺の感覚は、何があっても「ケータイ」だけは手放さないタイプの人間とは根本的に違う)。実際にはJAF会員でもなく現金の持ち合わせも無いというと「後払い不可」ということで拒絶されていたらしい。おいおい。

戻ってみると親切な人がさらに増えて何やら隣町から呼び出している様子で、警察は救急車を呼んでいた。大事を取って助手席のばーさまを搬送することにしたらしい。事情説明が何故か現場を見たわけでもない私の役目になってしまっているのが何だが、本人の話が要領を得ないのではしょうがない。しかしそこはプロ、痛いところはないか、おかしいところはないかとてきぱきと問診を交えて状況を把握していく。生命を扱っている職業の視点というものが感じられて妙に感心。

結局どーなったかというと、親切な人が隣町から呼んできたバキュームカー(3t)がトラロープで引きずり出すという力技で救出した。なんか色々心配した私がバカみたいだがw、とりあえず乗り上げ跡や車体下を目視できる範囲だけでもチェック。少なくとも何か漏れてるということはなさそうだし、その間に親切な人が駐車場を何周か自走させてチェックした限りでは一応走れるらしい。左前サスも何とか大丈夫だったようだ。もっとも、呼び出された親切な人の親父さんという人は、「こんな腐ったような車でわやな走り方しおってからに。免許返せ」とか罵倒の限りを尽くしていたが、じーさまは同じような話を繰り返すばかりでまるで話がかみ合ってないw大丈夫かよ。

とまぁ「ちょっとそこまで」が無駄に時間を食ってしまったが、とりあえず血を見るでもなく片付いて良かった。情けは人のなんとやら。

「こういう老人は本来車を運転するべきではない」と考えたシティーボーイ/ガールの諸君。それは理屈の上では全く正しいとゆーか私自身も同感なんだが、公共交通機関がロクに機能していない田舎で自家用車が使えないということの不自由さは想像を絶するというというのもまた事実。免許の自主返納というのは制度としては存在するが、実施する人間はほとんど存在しない理由がここにある。

これを社会保障として面倒見るのはどえらいことだが、痴呆症の老人が高速逆走の上正面衝突なんてニュースも聞くくらいだから、少なくとも高齢者の免許更新は厳格にやらないとマズいとは思う。いくら不便だろうと何だろうと、車の一面は間違いなく走る兇器なのであって、それで殺されたらたまったものではない。

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