オリジナル懐中時計ポーチ 最終試作完成!
第二次試作から三ヶ月近く経過してしまいましたが、待ちに待った第三次試作品が完成致しました。試作はこれをもって最終とし、いよいよ量産へと移行することになります。
それではまず、その試作品をご覧頂きましょう。
■概要
第二次試作の出来が良かったため、外見上極端な変更は加えられていません。しかし、地味ながらもその改良点はブラッシュアップの名に恥じないだけのものになっていると言えると思います。
まず、サイズについては予定通り縦方向を5mm縮小。それだけの変更ではありますが、確実に一回り小さくなって見えます。実機との対比等は後で行っていますが、16~18サイズ対応としてのバランスは保てているのではないかと考えています。
また、二次試作から取り入れられたメーカーロゴには、特にお願いしてカワセミを象ったエンブレムを入れて頂きました。カワセミは翡翠とも書き、「渓流の宝石」とも称される小鳥で、渓流釣りなどのフィールド・アクティビティをコンセプトとするシルバーレイククラブの革小物にエンブレムとして取り入れられています。こうしたエンブレムは他にもあり、帆布製品などの代表的なアイテムに付けられているのは魚ですが、ここでは敢えて翡翠にこだわってみました。
実はこのサイズに合うエンブレムの印章はなかったらしいのですが、今回のオーダーをきっかけになんと新造して刻印して下さったのこと。知らずにお願いしていた身としては恐縮しきりではありますが、同時になんとも心憎いところでもあります。
サイズの変更に伴い、ベルト通しの位置も微調整されています。機械的なサイズ調整だけでは見落としがちな部分にまでしっかり手が入っているのはさすがと言うべきか。
それでは、個々の改良点について見ていきます。
■サイズ(実機対比)
実機と三次試作品との対比です。
16サイズには余裕があり、18サイズを上限に、というイメージで調整した結果、このようになりました。とりあえず今回現物合わせを行った5ozケースの時計までは、ほぼ問題なく収まるようになっています。18サイズには大振りなケースが多く、あまり極端に大きいものには対応できない可能性もありますが、そうしたものを普段使いのレベルで持ち歩こうという方はまず素人ではないと思われますので(笑)、事前のリサーチをしっかりやってからご使用下さいませ。
また、ベルクロの留め位置も若干変更され、蓋を閉める時のテンションを微調整できるようになりました。ベルクロの幅からして、上下とも5mm程度の調整幅があるのではないかと思います。
■サイド部分
時計を不意の落下から守るための紐やチェーン。本来は衣服に留めるそれらをポーチ自体に留めて安全かつ便利に利用できるのがこのポーチの大きな特長ですが、これまでは紐や鎖が蓋の隙間に挟まって少々収まりが悪いという問題がありました。
今回の改良事項はこれを解決するため、紐の通る側を下げて隙間を作ってはというものですが、そこはプロ、よりスマートな解決方法を提示して下さいました。
サイドだけを下げると強度が低下することから、中央部に半円状の切り欠きが入りました。これはうまい手だと感心。手持ちの組紐と鎖で試してみましたが、問題なく収納できました。鎖はアンティークのシルバーチェーン、重量が75グラムに達する太いもので試しているので、大抵のものには対応できると思われます。ただし、革対金属の接触になるので、鎖を使って長期間に渡って酷使した場合には消耗は避けられないかもしれません。
■余禄・スペーサによる微調整
最大公約数的なサイズとなったため、残念ながら、この懐中時計ポーチがまったくの無調整でジャストフィットすることは少ないと思われます。また、箱型という構造上、円形の時計をただ収納すると必然的に隙間が生まれます。内張りや緩衝材などを備えているとはいえ、こうした隙間は無用の振動や衝撃の原因にならないとも限りません。
今回の企画に興味をお持ちの方は、懐中時計に並々ならぬ愛着を持ちのはず。ここはご自分の時計のため、画竜点睛を入れるべく最後のひと手間を加えて頂くことをお勧め致します。
具体的には、スペーサを作って隙間を埋めます。今回ご紹介するのはあくまで一例ですが、16サイズの時計にはかなり応用が利くはずです。
まず、芯材を用意します。今回採用したのはスポーツバッグの底板などに使われるようなナイロン板。割れるような素材は何かあった時に怖いので避けたほうが無難かと思います。元来は一次試作のオイルレザーがかなり柔らかい素材であったためにそれをサポートするのが目的だったのですが、以後も剛性の向上にかなり役立っています。
適当な大きさに切り出した(現物合わせが一番手っ取り早いでしょう)芯材に、ベースとなる緩衝材を貼り付けます。私の場合は、厚さ5mmほどのウレタンゴム(シール付き)を使いました。東急ハンズあたりなら簡単に手に入る素材です。
さて、最も工夫が必要なのは立てて収納する際の底に当たる部分。私はコレクションケースの製作時に使った緩衝材の端材を使いました。ぴたりと円形に整形するのも大変なので、三角形にカットした端材を組み合わせることで代用していますが、機能的には何の問題もありません。組み立ても両面テープで張り合わせただけ。
特殊な素材を使うのが能というわけではなく、衝撃吸収に役立つものなら何でも良いでしょう。用途上、低反発ウレタンのようなものが向いているとは思いますが、スポンジ程度でも役には立つ筈です。
内部に納めておくものなので外見を気にする必要はまずないとは思いますが、あまり無機質な合成素材が覗いて見えるのも何なので、(後付けながら)ベースの部分にはセーム革を張ってみました。天然素材の風合いに適度な摩擦、汚れ拭きにも使われる機能性と、この用途には実に相応しい素材です。余裕のある方はこちらもお試しあれ。
ちょっと工作に興味があれば楽しいものですが、世の中にはそうでない方々もいらっしゃるでしょう。とにかく手間を惜しむということであれば、極端な話、柔らかい布か何かを丸めて底の方に敷いておくだけでも違うと思います。参考までに。
ここで紹介した例はあくまで一例。あとは皆様の創意工夫でもって最後の仕上げを行ってください。
■価格と納期について
三次試作の時点で予価が併せて示されました。今ロットの頒布価格は、9,450円(税込)です。
量産品ならいざ知らず、1ロット限りとなる可能性もある少量生産品。素材の変更から細部の構造に至るまで、散々ワガママを聞いて頂いた手前、数割価格が上がってもやむを得ないかとは思っていただけに、嬉しい驚きと言えます。
貧乏人の私には、四桁と五桁の間に聳え立つ高い高い心理的障壁がよく解るだけに、価格が「こちら側」に留まってくれたことには大きな意味があると思います。損得勘定が先に立てば恐らくこの価格は出ないでしょうし、そもそも企画自体が一顧だにされなかったことでしょう。改めて、ヒロセさんとシルバーレイククラブ(IKETEI)さんの心意気に感謝したいと思います。
正式にGOサインが出ることで、ヒロセさんにオーダー済みの皆様には、改めてメールにてヒロセさんから連絡があると思います。以後の流れはそちらの内容をご覧下さい。
「人手不足の折、製造には二ヶ月程度を要する」という見通しが伝えられていますので、これに従うと、皆様の手元に届くのは8月末から9月初め頃になるのではないかと思います。
今しばらく、楽しみにお待ち下さいませ。
なお、今ロットの製造数は50と聞いています。現時点でのオーダーを消化すると、残る在庫は10個程度になるのではないかと思われます。(執筆時点から見て)ごく最近にこの企画を初めて知った方でも入手できるチャンスはあると思いますので、ご希望のある方は、今からでも一度ヒロセさんにお問い合わせされることをお勧めします。
2008/11/17追記
先月の段階で在庫分も含めて今ロットが完売したとの連絡を頂きました。これでやっと肩の荷が下りたとほっと一息。お求め頂いた皆様、ありがとうございました。
しかし、その後もなお問い合わせが続いているようです。流行にあまり関係ないアイテムなのである程度は予想していなくもなかったのですが、入手を逃した方には申し訳なく思っております。
どうしたものかと思っていたのですが、なんとこの段階でヒロセさんから「次ロットを検討しても良い」との有り難いお言葉を頂きました。
詳細はこちらのページをご覧下さい。
Comments
はじめまして。
初めて購入した懐中時計の持ち運び方について悩んでいるときにこちらのサイトにたどり着き、これだ!と思って早速メーカー様に問い合わさせていただきました。
すると、まだ在庫は大丈夫とのことで、予約が完了し、一安心しているところです。
この企画を実現してくれた管理人様とメーカー様には感謝してもしたりません。
本当にありがとうございました。
ついに完成ですね。ヒロセさんからメールをいただきました。到着を心待ちにしています!
ついに完成ですね!
お疲れ様でした。
エンブレム恰好いいですね~。
手元に届くのが楽しみです。
おお、ついに……ですね!
ロゴもとても素敵で今から楽しみです。
最後の一手間を自分で加えるというのも、より愛着が沸いていいですねー。
いささか反応が遅くなりました。
ついに最終版完成ですね。
しかし、エンブレムの印象を新造していただけるとは粋な計らいに感謝ですね。
あとは製造完了を待つばかりということで、楽しみです。
コメント頂いた皆さん、ありがとうございます。
ここからの待ち時間がまた長く感じられることと思いますが、ひとまずゴールは見えました。これも皆様の応援のお陰です。ありがとうございました。
>> アラヤ さん
はじめまして。
懐中時計(とりわけアンティーク)はブームに乗っている腕時計に比べればマイナーな存在ですが、当サイトの企画が同好の皆様のお役に立てればと思っています。
この一品がアラヤさんの懐中時計ライフをより豊かにしてくれれば、冥利に尽きます。
>> 天河 雫
お待たせしました!
カワセミは他の革小物に付いていたのに一目惚れしまして(笑)。オイルレザー版だと焼印のような色合いの変化があってより鮮明なのですが、ワックスレザーではまた少々趣が違っています。
現物をお手にとって確かめて頂けるのが楽しみです。
>> KB さん
やはり最後は自身の愛着やこだわりにどこまで胸を張れるかということが大事かな、と私は思っています。
実用のための調整もそうですが、これを小道具あるいは素材として、楽しみながら(ここ重要)試行錯誤していきたいものですね。
>> 信 さん
開発協力ありがとうございました。
18Sのサンプルを提供頂けていなければ、16S限定の小さくまとまったモノで終わってたかも知れません(それはそれで需要はあったでしょうが(笑))。
もう暫くですので、お楽しみに。
はじめまして!
懐中時計のケースはいくら探しても見つからなかったのでこのような企画を実現していただいて本当に感謝しております。
メーカー様に問い合わせたところ、革の取り都合余分に製作されていたそうで、御蔭様で最後の一点を購入することができました。
本当にありがとうございました。